by the seat of one's pants
ぼくらの sitcom、 Seinfeld S05E19 からです。
George と Kramer が古着屋で入れ違いになるところ。去り際の George に Kramer がもう一度言葉を掛けます。
KRAMER: Oh hey guess what. Morty Seinfeld and I are going into business together, selling raincoats.
GEORGE: Hey that's swell.
KRAMER: Yea we worked it out all over dinner last night.
GEORGE: Dinner? (grabs Kramer)
KRAMER: Ya.
GEORGE: You had dinner with the Seinfelds?
KRAMER: Yea, last night.
GEORGE: Was this something you had planned for a while?
KRAMER: No it was a spur of the moment. Well you know Morty likes to fly by the seat of his vintage pants.
GEORGE: (hurriedly leaves Rudy's) They had plans, They had plans!
さて、いろいろとレベル高めです。長くなるので Kramer が入ってきたあとのやり取りは端折りましたが、Seinfeld のおもしろさが詰まってるような気がします。お馬鹿キャラが2人、機知に富んだ会話を交えて低レベルで幼稚なことをやってるわけですよ。このシーンなんかライターはガッツポーズじゃないですかね。まずは訳を当ててみます。
KRAMER: (去り際の George に向かって)あぁ、そうだ。 Morty Seinfeld と一緒にビジネスをすることになったんだ。レインコートを売るんだよ。 GEORGE: へぇ。そりゃすごい。 KRAMER: そうなんだよ。昨日、晩飯食いながらずっと話してたんだ。 GEORGE: (Kramer の腕を掴んで) 晩飯?? KRAMER: あぁ。 GEORGE: 昨日の夜 Jerry の両親と食事したのか? KRAMER: あぁ、昨日の夜だ。 GEORGE: それって前からの予定だったのか? KRAMER: いや、急に決まったことだ。 まぁ、なんつーか、Morty は閃きで動く人間だろ。 GEORGE: (急いで店を飛び出して) 予定があったはずだ。予定があったはずだろ!
ストーリーの補足です。Morty Seinfeld は 主人公 Jerry のお父さん。このエピソードの前半で George は Jerry の両親 (the Seinfelds) を自分の両親の家での食事に誘ってるんです。ところが Jerry の両親はしどろもどろに「予定がある」だのなんだの、嘘くさく断ったんですね。Jerry の両親は George の両親のことが嫌いなんです。もちろん George に向かって「お前の親父とおふくろのことが嫌いだ」とは言わなかったんですが、George からするとなんかもやもやします。もしかして俺の両親のこと嫌いなの?みたいな。
で、この古着屋のシーンで「予定がある」と言ってたのは嘘だったとはっきりしたんです。Mortyは自分の両親との食事は断って Kramer と食事をし、しかもそれが予定されていたものではないと。
ちなみに George, この話の中で、別の人物に似たような嘘をついているんです。自分のことは棚に上げる。みすぼらしさがよく表れています。
1. swell
ちょっと古い表現かもしれません。口語的、人によってはスラングと言うかも。
元々の意味は 名詞だと”膨れ、隆起”、動詞だと"膨れる” ですね。
捻挫なんかで手足が腫れるなんて言うときもこの言葉を使うんですが。
ここでの George の使い方だと意味はずばり "cool"
That's swell = That's cool です。形容詞になるんですね。
You have a swell car.
みたいな使い方もOK。
映画『シャイニング』でキチガイ役のジャック・ニコルソンがこの言葉を使ってました。
2. a spur of the moment
spur は (名詞)拍車、刺激 (動詞)拍車をかける、刺激する
というような意味です。辞書によると。
で辞書にはさらにこんな表現が載っています。
on the spur of the moment 時のはずみで, 出来心で, とっさに.
例文を作ってみましょうか。
I made a lie like that on the spur of the moment.
とっさにそんなウソをつきました。
副詞句としても名詞句としても使えますね。
3. fly by the seat of his vintage pants.
今日の表題イディオムです。
by the seat of one's pants
又は
fly by the seat of one's pants
これはさすがに知らなければ意味を推測することも難しいでしょう。
意味は「経験や勘で物事を行う(判断する)」です。
He always does his job by the seat of his pants.
He always flies by the seat of his pants.
どちらも OK です。「彼はいつも経験と勘で仕事をする」ですね。
ここでの "seat" は ”座席” ではなく ”お尻の部分” です。"pants" はもちろんズボンのこと。
直訳すると「自分のズボンのケツで(飛ぶ)」となります。なんのこっちゃ。
機器や技術の発達していなかった飛行機の黎明期、パイロットが操縦の判断を自分のお尻から伝わる感覚を頼りに行っていた、とかなんとか。そんなのが語源のようですね。
ちなみに Kramer は "vintage" という言葉で "pants" を修飾しています。
これはこのエピソードで ”古着” がキーワードになっていることに関係してます。
ここまでの話の流れ、文脈があるからこそ意味のある言い回しになってるんですね。
2人が会話をしているのも古着屋。Morty と Kramer が商売を始めようとしているのも古いレインコート。この言葉を口にしたとき、”うまいこと言った感”丸出しで得意げな表情を浮かべている Kramer 。いいセリフ、いいシーンです。
今日はここまでです。swell なんて簡単な言葉ですから機会があれば使ってみてほしいです。
80年代かよ!みたいなツッコミはあるかもしれないしないかもしれない。