money = お金 と訳すセンス
少し変わったお題で。
"money"という言葉があります。「おかね」です。なんですが、日本語で「おかね」のフォーマルな言葉ってなんですかね。ここで言ってるフォーマルというのは固い感じ、という意味です。
例えば、「ご飯」という言葉はフォーマルな感じではないです。おそらく「食事」がそれでしょう。
例えば、「お父さん」「お母さん」であれば「父」「母」あるいは「父親」「母親」だと思います。
何でこんな話をするかというと、多いんですね、すごく。フォーマルな感じの訳文で「お金」という言葉を使う翻訳者の人が。素人のブログならまだしもプロと思しき人たちまで。
某サッカー情報サイトはまさにその典型です。もともとあまり質の高いサイトではないと言われてますので、無理もないんでしょうけど。
It is obvious that diet is very important for sports athletes.
食事がアスリートにとって重要なのは言うまでもない。
何ていう文章をですよ、
「ご飯がアスリートにとって重要なのは言うまでもない。」って言ったらおかしいわけですよ。ご飯って...と。
When I was a kid, my brother was my idol.
子供の頃、僕にとっては兄がアイドルだった。
なんていう文章をですよ、
「子供の頃、僕にとってはお兄さんがアイドルだった。」って言ったらおかしいわけです。固い感じで訳すなら。
ところが、某サッカー情報サイト(あるいはその他の人たち)はこんな訳を平気でするんです。
ある選手が言います。
Money is not important to me.
お金は僕にとって重要ではない。
おかしいでしょ。翻訳のセンスの問題です。わかりますよ。"money"を「カネ」とするのも少し変ですし、「金」と書いてしまうと「カネ」なのか「キン」なのかわからなくなってしまう、というのもあるでしょう。
ただ、そこは何とかしてほしいです、正直。
上の例では「金銭」という言葉はどうでしょう。
「金銭は僕にとって重要ではない。」
そこまで悪くないと思います。あるいは得意のカタカナ語で
「サラリーは僕にとって重要なものではない。」
なんて言ってもいいかもしれません。
今度は監督さんが言いました。
We have enough money to spend.
我々には使えるお金が十分にある。
おかしいでしょ。「お金」って...。そこはこういきましょう。
「我々には使える資金が十分にある」
いいと思いませんか?
サッカーの記事をよく読むんですが、”money”を「お金」と訳すんですよ、ホントに。そのたびに何か気持ち悪い感じ、違和感を覚えるんです。
一方で、すごくちゃんとした翻訳者の人たちもいるんです。もちろん。
NFLjapan(アメフトサイトです)の記事では「お金」なんて言葉はほとんど見たことがありません。なので読んでいてストレスがないんです。訳も上手なんです。
翻訳者のレベルの問題ですよね。
あ、今この記事を書いていて丁度いい例文を見つけました。しつこくて申し訳ありません。
The quality is most of the time linked with the amount of money.
サッカー翻訳者にかかるとこの文は
「(選手の)価値はいつもお金の量に関連付けられる。」
と、まぁこんな感じになりますよ。まず間違いなく。お金。
「(選手の)価値はいつも移籍金の額と関連付けられてしまう。」
これでいいと思うんですけど。(実際にこの文脈では”money"=移籍金(チーム移る際に発生する補償金)を指しています。)
"money"という言葉は文脈に応じて「金銭」「資金」「資金力」「経済力」「費用」、あるいはその他の適切な言葉を使って訳してほしいものです。
サッカー翻訳者の人たち、頑張りましょう。